産後ケア ワークショップレポート 日本の産後ケアの第一人者、NPO法人マドレボニータの吉岡マコさんによる産後ケアのワークショップが池田で開催されました。
2015年12月21日 保健福祉総合センター3F 多目的室
出産後の女性の心と体のヘルスケアを
産後ケアと聞いて、何を思い浮かべますか? 妊娠・出産で緩んだお腹を引き締めること。もちろん、それもあるでしょう。 実はいま、産後の母親の10人に1人が産後うつと診断されているそうです。そして、虐待によって死亡したこどものうち、43%が0歳児という調査結果が出ています。妊娠中はケアがある。出産後の赤ちゃんのケアもある。でも、出産後のお母さんのケアはどうでしょう? お母さんの健康は後回しになっていませんか?
産後ケアのワークショップ
2015年12月20日、日本の産後ケアの第一人者、NPO法人マドレボニータの吉岡マコさんによる産後ケアのワークショップが池田で開催されました。 吉岡さんは出産後の女性の心と体のヘルスケアを全国で指導されています。また、関東では「産後のボディケア&フィットネス教室」が60ヶ所もあり、年間8000人もの人が受講しているそうです。残念ながら、関西ではまだ教室もなく、ワークショップもあまり開催されていません。今回は、池田市内から11人のお母さんとこども達が参加してくださいました。
有酸素運動でリラックス、体力回復、シェイプアップ
まず、バランスボールを使って身体を隅々まで動かします。自己紹介も、バランスボールで弾みながら。吉岡さんが大切にしていることは、お母さん自身の主体性。「〇〇ちゃんのお母さん」「私のこどもは生後◯ヶ月です」ではなく、「私は〇〇です。産後◯ヶ月です」と自己紹介するだけで、自分の意志で考え、自分が大切という自覚が芽生えるのだそうです。お母さんたちが一瞬戸惑った表情を見せますが、ルール通りに一人30秒で自己紹介。弾みながら、自分の言葉で自分を語る。最初、緊張、もしくは不安で表情の硬かったお母さんたちの顔がどんどん紅潮していき、イキイキとした表情になっていきました。エクササイズはどんどん複雑な動き、よりきつい動きになっていきます。「産後なのにこんな激しい運動をしてもいいの?」「動きについていけない、足と手と頭のうごきがバラバラ」と、横の人と喋りながらも、とても楽しそう。ふだん赤ちゃんのお世話で体力的にしんどい毎日を送っているお母さん。でもこれは気持ちのいいしんどさなんですね。プログラムが終わった時には全員、とてもスッキリとしたいい笑顔になっていました。「心地良い運動は、エネルギー物質を作るんです。エネルギーを蓄積することで、お母さんが元気に綺麗になる。それがまず大切なんです」と吉岡さん。
テーマを決めて語り合い、コミュニケーション力をつけ、シェアリングで気持ちをわかちあう
今回参加してくださったのは、初めての出産をした方から、2人、3人のこどもを持つ方、また、育休中の方、自宅で開業されている方、専業主婦の方と、それぞれ。年齢も20代から40代と幅広い。こんなに違った属性を持った方が一つの場所に集まり、テーマを決めて話し合うことは日常ではあまり経験できません。まして、こどもとふたりきりで家にいるお母さんには貴重な時間です。今回は、「GOOD&NEW」というテーマで、この24時間にあったいいことを10個書き出し、そのうちの一つを隣の人に30秒で話すというもの。時間を区切り、テーマを持つと集中して考えるので、脳を活性化させるのだそうです。たった30秒、一生懸命語り、一生懸命聞くことで、一気に親近感が高まります。 親近感が高まったところで、全員で話し合うシェアリング。「疲れてきて、こどもに対していい加減な対応をしていた。体力をつけなければならないと実感した」「育児を不安に思ってるのは自分だけじゃないとわかってよかった」「自分の言葉で話すことが大事だと教えてもらい、帰ったら夫と話し合いたい。夫婦あっての家族だと再認識した」という意見にたくさんの人が頷いている場面もありました。
自分で自分を手入れするセルフケア
「体型は自分で選べる。産んだことを言い訳にしない」と吉岡さん。そのために家でできる簡単な運動を最後に教えてくださいました。何より肩こりに悩む時期なので、肩甲骨を大きく動かす動きで体も心もスッキリ。自分の身体は自分でつくる。セルフケアをするという意識が、自分の意志で人生を選択するという意識につながります。
他人を信頼するチカラを育む託児
マドレボニータのプログラムは、生後210日までの赤ちゃんはお母さんと一緒に参加します。真ん中で寝転がっていてもいいし、ぐずるようならお母さんが抱っこしたまま、一緒に弾みます。弾んでいるうちに赤ちゃんが寝てしまうことも。それ以上の大きなこどもは、危険ということもあり、別室での託児になります。最初、なかなかお母さんから離れられなかったこどもも、保育士さんが上手に誘導してこども達の輪に入って行きました。ワークショップの途中で、寂しくなったこどもが会場に入ってしまうというハプニングもありましたが、吉岡さんが、「ちゃんとお母さんは帰ってくると伝えれば、こどもは安心します」とアドバイス。こどもが落ち着いて保育の場所に戻るまでプログラムを中断して待ちました。その間に、210日をすぎればこどもはどんどん他人に委ねましょう、とお話しされました。他人に委ねるには、その人を信じなければならない。お母さんが信じることで、こどもも人を信じる力がつく。保育所やよそのお母さんに預かってもらうことで、家ではできない経験ができ、そのこどもの世界がより広がる。お母さんにとってもこどもにとっても、こんな素敵なことはないのだと。 実は、このワークショップに参加されたお母さんたちの心を一番とらえたのは、このお話だったようです。自分のしたいことをするために、もしくは仕事をするためにこどもを預けることに罪悪感を感じていた、という話がたくさん聞かれました。育休中のお母さんが、「まだ早い、こどもがかわいそうと思っていたが、こどもを預けていいんだという話に心が軽くなった」と言ってくださったのも嬉しい効果でした。
何度も参加したい、定期的に開催してほしい
プログラム終了後、参加された方に感想を聞いてみました。「もっと楽なのかと思っていたら、けっこうハードでびっくりしたが、とても気持ちがよかった」「動きが難しかったけれど、楽しく、身体が軽くなった」「運動できてよかった」「こどもと家にこもっていたので、人と話せてよかった」と皆さん大満足。定期的に開催してほしい、もっと参加したいという意見も圧倒的でした。市にはスポーツ教室はあるけれど、マタニティや産後に参加できるものはないので、こういう運動ができるサークルか教室を作って欲しいという意見もありました。また、産後うつで苦しい時期のあったという方は、同じような思いをして苦しんでいる人が早くこのプログラムに出会って楽になってほしいと語ってくださいました。