子どもの発達、池田市のサポート
2017年10月12日
子どもの成長は親にとって嬉しいこと。でも、いろんなことができるようになるにつれて心やからだの「発達」が気になることも。育児の本やネットで調べたら◯歳で◯◯ができるようになると書いてあるのにうちの子はまだできないと焦ったり、人見知りが強く、うまく集団に入れるのか不安、と思ったり。そんな時のサポートはどこでしてもらえるのか、池田市子ども・健康部発達支援課の佐渡俊洋課長にお話を伺いました。
市全体が連携して、子ども一人ひとりの強みを生かすような支援を
「得意なことと苦手なことというのは、誰にもあります。発達の仕方も、子どもによってさまざま。だから、まずは、できないことを悩むより、できるところを見つけて褒めてあげてほしいんです」。それが大前提、と佐渡課長。池田市では4か月児、1歳6か月児、3歳6か月時の乳幼児健康診査があり、気になることがあればそこで相談することもできます。また、幼稚園や保育園に入ったけれど、友達の輪に入れない、集団生活になじめない、うちの子はどうも他の子と違うようだと思っても、どこに相談に行っていいのかわからない。そんなときは発達支援課がまず相談にのってくれます。心理相談員がじっくり話を聞き、保育園や幼稚園、家庭での関わり方を工夫したり環境を整えたりすることが向いているのか、少人数でのグループ活動が向いているのか、個別での関わりが向いているのかなど、その子どもの強みを引き出しやすい環境や関わりを保護者と相談しながら探していき、必要であれば医療や療育につないでいかれるそうです。
発達障がいなど、療育などが必要な場合は、早く始めればより効果が上がると言われています。「だから、ちょっとしたことでも、まずは気軽に相談に来てほしいですね。発達支援課の心理相談員は、できないことをどうにかしようとするより、できるところに目を向けることを大切にしています。スタッフが一丸となって支援にあたり、一人ひとりの強みを生かすような発達支援を心がけているんです」とのこと。
また、必要な担当部署や機関につなぐなど、子どもに最適な支援環境が整えられるようにサポートしているそうです。
毎日子どもと接する保護者や園の先生方が子どもを理解して、適切な対応を。心理相談員はそのお手伝いをしているんです。
実際にいろいろな相談を受けられている心理相談員の森田紀子さん、熊木容子さん、安田千恵子さんにもお話を聞きました。「子どもと常日頃関わっているのは、おうちの人であり、保育園や幼稚園の先生方。私たちは、その方たちといっしょにお困りごとの解決策を考えていきたいと思っています」という森田さん。日頃は保育園や幼稚園に巡回相談に回っているそうです。「おうちと園では子どもの様子が違うこともあります。個別の様子と集団での様子など、違った場面を多面的に見られて、それを生かせるのが私たちの強みかなと思います」と森田さん。定期的に巡回することで、子どもたちの成長の様子を見ることもできるし、気軽に相談してもらえる機会にもなっているようです。
「やっていいことか悪いことかを理解しているのかどうかがわからない子どもがいる」という先生方からの相談が時々ある、と熊木さん。なんでもよくできるのに、いきなりお友達を叩いたり、何度注意してもまたやってしまったり。経験の長い先生でも戸惑うことがあるそう。発達面にばらつきがあるのかもしれないし、大人の許容度が狭くなっているのかもしれない、と感じることもあるそうです。「保護者からも相談があるときなどは、集団での様子を観察したり、家庭での姿を伺ったりして、場合によっては発達検査をおすすめすることも」。そうすることで子どもの得意なことや苦手なことを客観的につかみ、環境の整え方や声掛けの仕方、伝え方を工夫することができます。対応の仕方のヒントなどを先生やお母さんなどに伝え、子どもにとってより良いアプローチの仕方を一緒に考えていくようにするとのこと。子どもが「理解してもらえた」という安心感を持てば、生活も落ち着きます。また、大人も対応がわかれば不必要にイライラせず冷静になれるので、叱ることも減り、褒めることが増えるという、良い循環が生まれていくんだそうです。
「専門に勉強をし、いろんな子どもさんを見てきても、子育ては学ぶことがまだまだあります」と安田さん。「毎日子どもと向き合うお母さんは大変だと思うし、それぞれ個性的な子どもを育てる中で、子育てのことでわからないことがあっても当たり前。わからないことを相談するのは決して恥ずかしいことでもなんでもありません。どんな小さなことでも園の先生や私たち発達支援課に相談してほしいです」。
「一例一例、子どもさんも違いますし、保護者の考え方なども違います。難しいなと思うことも多いですが、その苦労がまた面白みとなっています。うまく対応ができて、楽しそうに通園していますと言ってもらったときは、本当にこの仕事をしていてよかったと思い、やりがいにもつながります」「できなかったことができるようになり、生き生きした子どもの姿を見ると、エネルギーを貰えます」と3人が口々におっしゃったのが印象的でした。
子どもが何に興味があるのかを客観的に理解して、それを日常の場面で生かし、 子どものステキなところを引き出す
池田市では、1歳6か月健診の日に同じフロアで希望者に“かおTV”を行っています。お母さんの膝に抱かれて、3分弱TV画面を見るだけ。子どもが何に興味をもって見ていたのか、視線の軌跡で示されます。その読み取りと保護者へのフィードバックをするのが、大阪大学大学院、特任研究員で、臨床発達心理士の村田絵美さん。「良いとか悪いとかという結果が出るものではありません。何に興味を持っていてもいいんです。保護者と一緒に、その子どもが何に興味があるのかを客観的に理解するツールなんです。それを日常の場面にどのように生かすと子どものステキなところをより引き出しやすいかを、保護者にお話ししています」。フィードバックは、認定オペレーターにしかできないとか。池田市の場合は、研究に携わっている村田さんが直接行ってくれます。健診前にかおTVの説明をしていた発達支援課の森田さんも「安心しておまかせしています」と信頼を寄せています。人の話を聞かないと思われていた子どもが、人より動くものに興味があることがわかり、話を聞いてほしいときはその子どもが興味のあるものを見えないようにして興味を惹きつけるように働きかけると、人の話に耳を傾けやすくなったという実例もあったそうです。
体験されたお母さんに感想を聞いてみると「人の顔をこんなに見てるんだとびっくりした」「上の子も以前体験したが、子どもによってこんなに違いが出るのかと驚いた。はっきりわかってよかった」とのこと。全国でも、実施している自治体はまだ少なく、定期的に行っているところはほんのわずかだとか。池田市はかおTVを独自で持っているので、個別の対応もできるとのこと。興味のある方は発達支援課にお問い合わせください。
一人ひとりにより添い、家族もサポートしていく支援が大切
「お母さんたちの不安を取り除くこと」これも発達支援課の大切な仕事なのだそうです。一番子どもの身近にいるお母さんが子育てに自信を失ったり、悩みを抱え込んで不安だったりすると、どうしても子育てに影響が出てしまう。だから、お母さんのサポートを大切にしているのだそう。子どものことで相談に行くのはなかなか勇気がいること。でも、1人で悩んでいるのは本当に辛い。誰かに話を聞いてもらうだけでも、心の負担が軽くなります。「その、“誰か”に発達支援課がなれれば」。お話を伺っていて、その思いが伝わってくるようでした。
池田市に転入してきたばかりで、どこに相談に行ったらいいのかわからないときや、子どものことで心配なこと、不安なことがあれば、まず、発達支援課を訪ねてみてください。「どんな小さなことでもいいんです」と課長はじめ、心理相談員の皆さんが口を揃えておっしゃっていました。子どもの元気な笑顔が見たい、子どもを見守るお父さんやお母さんが元気になってほしい、と願っている素敵なスタッフが、待ってくれていますよ。